GVVC Weekly – Week 179

Kraków Loves Adana – “Open The Door” (Official Video)

クラコフ・ラヴズ・アダナがリリースした3曲入りEPからリード曲のこちらをビデオカット。
少し前Italians Do It Betterからシングルをいくつかリリースしていたような気もしますが、
最近は自主で出しているようです。めちゃくちゃニューオーダーフリークなサウンドでして、
過度なロマンティックとサスペンス趣味を完全に抜ききった素朴なChromaticsって感じが
とてもいい。目新しさはゼロですがアンニュイ版First Hate的なわかりやすさで好きですね。
女性ボーカルの声、節回しがLali PunaとZola Jesusを混ぜ合わせたような雰囲気で面白い。
なお、歌のエレメント自体は昨年に発表したアルバムの収録曲『Dream House』の再構築。


Fontaines D.C. – Skinty Fia (Official Video)

フォンテインズD.C.が4月にリリースする新作アルバムよりタイトルトラックをビデオ公開。
これはかなりの凄みを伴ったダークなアシッドUKロック・ポストパンクで、粘っこくて黒い
グルーヴが渦巻く中淡々と語るカリスマティックな歌唱ながらどこか間口の広さを感じさせ、
ポップにすら響くところが大物感ありである意味ストーントーゼズやプライマルスクリーム。
リスニングアートとしてもインディダンスとしても機能する、非常に素晴らしい一発ですね。


Diatom Deli – Disarray [Official Video]

ニューメキシコ州タオスのSSW、ダイアトム・デリが5月にリリースする新作からの先行曲。
エアリーかつクリアな無国籍アンビエント空中フォークで、ある種フアナ・モリーナとかの
アーシー音響派みたいな趣もある仕上がりです。非常に美しく深みがありつつも軽い音像と、
ちょっと中々ないリスニング体験で、オリエンタルなメロディを臭みなくジェントルに包み
かなりモダンでコンテンポラリーな雰囲気にしてます。でもちょっと爽健美茶♪って感じも。


Flock of Dimes – It Just Goes On [OFFICIAL VIDEO]

フロック・オブ・ダイムズが未発表曲やライブ版などのレアリティーズLPをリリースします。
先行公開されたオープニングトラックのこちらは純然たる新曲で、スローで淡々とした中に
メロディが熱を帯びゆったり進んでいく実にシンプルな構成の楽曲ですが、彼女の十八番で
コンテンポラリーな響きのする流麗なシークエンスが決して主張しすぎないかたちで微かに
レイヤーに散りばめられていて、全体の印象が勢いアンビエントぽくなるというマジックが
いかんなく発揮されております。結果、主旋律も実際より華やかに響いてくるという巧の技。


PENDANT – Blue Mare [Official Music Video]

L.A.のペンダントが新作アルバムから新たな先行トラックをビデオ公開。これまで出ていた
楽曲は、エキセントリックなテイストの騒乱エレクトロポップで正直、好みではなかったが
今回は一転して落としたダークウェイヴ、スロウコア路線のシューゲイズ・ソウルバラッド。
ゴスなヴィジュアルイメージとナルシシスティックな歌唱で花を添えるコーラスが美しいね。

今週のLP/EPフルリリース

young prisms – Drifter (LP)

素晴らしい、本当に素晴らしい。シューゲイズと一言で片付けてしまえばそれまでだけども、
ギターポップやドリームポップの延長みたいなナヨナヨしいやつではなくて、逆にオルタナ
増し増しのゴリったやつでもない、適度な尖りと甘さの歪で起こすサウンドの洪水と濁流。
それはちゃんとアートロックとして響く、気高い佇まいなんです。まあ詰まる所は音色の差、
という話なんですが、メロディも基本は塩味ながらところどころ激甘の印象的なフレーズを
挟み込むことで良いメリハリがついてます。久々のカムバックが過去最高の仕上がりっての
相当に格好いいし、インターネットに汚染されていない音楽があくまでもインターネットを
従属物として利用し伝播していたあの頃の感じが、今はもはやカウンターとして響くような
かなりしんどい世相で日頃から辛い部分あるんだけどこうやって生き残っていくしかないよ。
M-3、M-9あたりのコーラスは泣けます。Firetalkがレーベルとして成長してるのも嬉しい。


Kindsight – Swedish Punk (LP)

デビューシングルからして良かったからずっとそこそこ注視していたけど遂にフルレングス。
最大の特徴はコケティッシュとめんどくさ系のねちっこさを行き来する凄くいいボーカルで、
クリーンで北欧らしさ溢れるエヴァーグリーン・インディポップの楽曲に対してスパイスに。
パッと鳴らした印象はギターポップなのかもしれないが、展開に程よくひねりが効いており
テクニカル路線ではないもののリズムの引き出しがそこそこ多いので一本調子にはならずに
通しで聴けるアルバムになってます。ドラム君がかなり元気なのも効いてる感じがしますね。
パンクは全体の10%くらいだと思うけど、不思議と納得感のあるアルバムタイトルもナイス。
これはちょっと大手のインディレーベルに移籍してもおかしくない出来で、期待以上でした。


Camp Cope – Running with the Hurricane (LP)

ボーカルがこれ以上ないくらい脂乗ってきて本当に力強く、もうインディだとかいう範疇を
完全に超えていて、歌唱に限って言えばメインストリーム超一流ミュージシャン並みの貫禄。
でも楽曲や装飾がシンプルなOGインディロックで華美じゃないから、その辺の潔さとかが
この音楽をちゃんと真摯なものにしてる。Run For Coverってこともあって、メロディには
そこはかとなくエモの香りもするしね。所謂バンド形態の実質SSWだから、サウンド自体は
本当に何も特筆することがないんだけどまぁメディアのこの異様な持ち上げぶりも分かるな。
でも今がギリギリくらいでこれ以上歌い込みがクドくなると怪しいから、この辺でとどめて。


The Lovecraft Sextet – Nights Of Lust (LP)

これは面白い。ダークジャズだとかドゥームジャズだとかって書いてるけどまあわかる感じ、
全体像としてはモダンニューエイジというかヴェイパーウェイヴっぽさも若干あるんだけど
とにかくホラーまではいかないツインピークス的な世界観に80’sシンセウェイヴをジャジー
かつアンビエントに構築し、冗談のバロック音楽をひとつまみ…という変態仕様なんですが
不思議とキワモノ臭さがなく、普通に映画のサントラ?と言い張れるような端正な質感です。
アートワークも合ってるような全然違うような絶妙なとこですね。最上位のB級って雰囲気。