GVVC Weekly – Week 153

Mr Twin Sister – Polvo

ミスター・ツイン・シスターが単発のニューシングルを公開。今回アンドレアのルーツ言語
スパニッシュで展開されるトーキングヘッズ路線のポストパンク・ハウスになっていまして、
いかにもNY勢らしいサウンド。スペ語でインディ風味の4つ打ちとNY感というところでは
マリア・ウスベックの一部楽曲を彷彿とさせるような部分も。あちらにはポストパンク感は
ありませんが…しかしこの人達は最初期から割とスタイリッシュでモダンに洗練させてくる
音作りだし相変わらず特徴のあるテクスチャーだけど、音楽性的な部分では本人らの志向が
初期とはかなり違ってきてて、個人的にはハウスに振りすぎたのが少し残念な部分もある。
ボーカルが本当に良いからもっとそこを活かして儚げな歌モノも継続して欲しかったなあと。


The Finks – The moment the world rushed in

月末にリリースされるザ・フィンクスの新作EP、ミニアルバムからのタイトルトラックです。
完全にビートレスの世界で紡がれるアンビエント・フォークポップで、ひたすら丸いシンセと
気の抜けた歌唱が印象的なフレーズを連発します。進行自体は軽くジャジーなため、下手しい
オシャレなラウンジポップにもなりかねない中、感覚が麻痺して意識が遠のいて行くような
ダルなムードを充満させる事で芸術点アップ。曲名となった一節は凄く刺さるメロディです。
音源としてのフィジカル盤は実質的には存在せず、デジタルの他はZINE媒体のみのリリース。


Personal Trainer – Fiddlefunk (official video)

無背景の闇の中で実際のバンドメンバーがある意味全くエアじゃないガチ演奏のエアギター、
エアドラム等、各々のプレイをひたすらやってるっていうビデオで、なんかさ…部分的には
これたまに見かけるやつだけど、メンバー全員で背景もなしの中全編ひたすらこれってのは
記憶になくて、ちょっと面白い。わかっていた事だけどドラムが一番馬鹿馬鹿しいというか
どうも笑ってしまう。跳ね返りがないからエアで同じ動きすんの難しいのよ高速だと特に。

日本のリリース

Bearwear – “Far East” feat. THEティバ (Official Music Video)

RUN FOR COVER周辺に近いようなメロディアス系(NOTメロコア)のモダンEMOバンド
ベアウェアと、シットゲイズ寄りのガレージロックから出発するも最近は若干音楽性を広げ
レイジーなオルタナフォーク系の楽曲等も見せはじめていたザ・ティバスプリット作から
こちらの一曲をピックアップ。ボーカルとサウンド共に両者の良さがぶつかる事なく上手く
調和した楽曲で、その結果エモでもガレージでもなくドリームポップとオルタナの中間的な
折衷インディロックのサウンドに着地。EHXの9系で出したようなフルート的なフレーズと
背後で浮かぶパッド音など全体的に上物の装飾が多く、煌びやかかつ緩いムードが展開され
非常にいいグルーヴ出てます。ティバは今まで聴いてた限りでは全英詞だった気がするけど
突然の部分日本語入ってきて少しびっくりしたね。コアメンバーにベース不在とドラム不在
って事でジョイントするのにちょうどいい2バンド、しかもこの楽曲を決定づけているのが
地味にそのベースとドラムだったりして面白い。フェードアウトじゃない方が良かったな!

今週のLP/EPフルリリース

Gerycz/Powers/Rolin – Lamplighter (LP)

ハンマーダルシマーってこんな音すんのね。サイケでフォーキーなトラディショナルインスト
って感じだけど、ドラム入りでこの手の要素は若干ゴリったりダークさが出たりしがちな所、
青空が広がってるような清涼感すらある明るくて開けた音像なのが素晴らしく貴重。これ、
ほぼ全編ジャムベースで作ってるはずだからいい意味での生々しさと躍動感が凄くリアルよ。
やってて楽しいのが伝わってくるし、まあいかにもジャムって感じでドラムがパタパタ状態、
ブレイクして竿物がトレモロっていうお約束展開は多々あるにしろ、基本の音色、雰囲気が
突き放してないからか自己満的な音楽性になってなくてかなり聴きやすいの。惜しむらくは
ラストのカオスだけ絶対いらん。ちゃんと楽曲を組み立てたような作品も聴いてみたいな。


Pia Fraus – Now You Know It Still Feels The Same

バンド20周年を記念して最初期の楽曲をセルフカバー、再録って事でほとんど自主1stから。
近年の作品は正直微妙だし、そんなに大ファンって程ではないが実質的デビュー作の2ndは
日本盤が出てたこともあってリアルタイムで聴いたし、目玉曲のM-1はやはり素晴らしいね。
マイブラの聴きにくい部分は一切取り入れずあくまで雰囲気としてのシューゲイズに留めて、
曲の作りはネオアコ・ギターポップ化してマイルドに、青春全振りの世界観と、もう日本で
ウケちゃう背景がトリプル役満。こういうバンド20年前の当時はそこまでいなかったんよ。
今こういうの山程いる事考えるとあるロールモデルとして影響力があったのかもしれないし、
そもそもエストニアってのが、色々な意味で環境が想像できない。当時中高生の自分ですら
この人たち、自分の国では仲間居なくて孤独だろうな…と心配になったもんだし、この少し
閉じた雰囲気と地域特有の肌寒い感じが、エヴァーグリーンなはずのムードに翳りを与えて
多分偶然なんだろうけど、本人たちの意図しないとこで深みが出てんだよね。いいバンド。


Spirits Having Fun – Two (LP)

この知的にねじれていながら少しイカツイ雰囲気、シカゴってのがもー本当にしっくりくる。
先行でいいなと何回か思いながらも曲単でうまいコメントが思いつかず掲載してなかったが
密かに期待していた。これ一言で形容するのが難しい音楽、マスロックまではいかんにしろ
相当めんどくさい曲展開、パートによっては思い切り軽やかにポップに弾けるし、急に重く
なったりもするからね。マスロック含むポストHCの要素が強いフリーキー・アートロック
ってとこかな。一瞬Faraquetっぽいとこすらちょいちょいあるし、やりすぎちゃう部分が
まだ洗練され切ってなくて全編通して真面目に聴いてるとすごい疲れる、全要素とリズムを
リアルタイムで解体して受容(脳内で一緒に演奏してるような状態)できる人ほどある意味
しんどいはず。ただリスナーを自然とそのモードに持ってけるということは実にバンド力が
高いというか、ここで展開されてるアンサンブルに説得力があるからナンですけどね。まあ
これライブで観たい。腕組んで家で聴くような音楽じゃないね…いやでもこれどう考えても
もう少し抜いて欲しいというかシンプルな部分増やしても良いと思うんだけどな。惜しい!