GVVC Weekly – Week 237

Paul Cherry feat. Kate Bollinger – OBO

シカゴのSSW、ポール・チェリーがケイト・ボリンジャーとのデュエット作品をリリース。プロジェクト自体は2曲入りのシングルという体裁ですが、ビデオも付いたA面扱いのこちらを紹介。
L.A.でのレコーディング中に偶然知り合い、なりゆきのスピード感でサクッと行ったコラボということですが素晴らしい出来で、爽やかながらもわずかにソウルとサイケが加味された甘くファニーなナンバーはアンノウン・モータウン・オーケストラがリゾートポップ化したような音像。
本人達が主演(熱演)のショートムーヴィー風な映像も楽曲の雰囲気にマッチした軽い洒脱コメディでいい感じです。


Rusty Santos – Mirror (feat. Panda Bear)

L.A.のラスティ・サントスがニューアルバムをアナウンスし、リードシングルを公開しました。
常にアニコレとセットでしか語られることがないというのもどうなんだと思うが、こうやって実際すぐパンダ・ベア連れてくるわけだから仕方ないというか、本人も回避しにいってないから問題ないのだろうね。
シンプルになった中期アニコレという感じで、ヒップホップ風のビートに乗るサイケポップといったところ。ブルックリン全盛期の香りも漂う節回しで、ちょっとだけサウダージというかラテンアメリカ・チルアウトの風情もあり。
なんだかんだ、一枚でいいからアニコレ本体でもエクスペリメンタルを省いたこのくらいの匙加減のものを作ってみて欲しいが、プライドが許さないのかな。


Speedy Ortiz – You S02

スピーディ・オーティスが5年ぶりとなる新作アルバムをアナウンスし先行トラックをビデオ公開。Carparkからリリースしてましたが、今回からはバンド本体もセイディの自主レーベルWax Nineからのリリースで、4月に公開していたシングルも収録するようです。
劇的な変化はないですが、Illuminati Hottiesのサラ(エンジニアが本業)が共同プロデュースかつミックスも行ってるみたいで、特にこの楽曲はガールポップと90’sオルタナロックの中にねじれインディがクレイジーに融合したネジぶっとび系の狂騒サウンドになってまして、ギターの鳴りも今までになくコシのある重めな質感で入ってるのがかなり効いてるなと。
業界におけるボーカルの存在感とバンド本体の実績がいまひとつ伴ってないというか、キャラ立ちすぎるとなんか逆にデバフかかる難しさあるのかなとか思ってましたが、今回すごくハマってるし最初からこういう路線でも良かったかもしれないですね。映像の方はタイトルで示唆している通り、架空の連ドラのシーズン2という設定であります。

今週のLP/EPフルリリース

Beach Fossils – Bunny (LP)

性急さが年相応になくなって落ち着いたとはいえ、基本的な音楽性は大きく変わってないのが良いね。決して枯れてきてはいなくて豊かでみずみずしいし、今回は特に柔らかく横に広がった包容力があり、ジェントル。
シグネチャーサウンドの完全クリーントーンのギター2本が単音で絡む煌めきはいつ聴いても美しい。ここまでの要素だけだとネオアコになりそうなところ、絶妙にストリートやブルックルン・NYを感じさせるのは強烈なタテのリズム感、ピッキングやビートだけの話じゃなくこのボーカル、声に特徴はないけど節回しの刻みにすごく特徴がある。それがポストパンクっぽくは一切ないってないあたりが稀有で、この人たちでしかないサウンドになってるんだよね。それで、初期はともかく後年に楽曲のスピードが遅くなってきてからもしっかりそこが残ってるのが面白いんです。キャリア通して決定的な名盤とかは無いんだけど、なんかカリスマ的な存在。ただねこれ、M-10のシューゲイズ風の曲は絶対いらない。


Speakers Corner Quartet – Further Out Than The Edge (LP)

どうしてもFive Corners Quintetがいるもんで、個人的にはこっちもSpeaker CornersとしてしまいがちなんですがSpeakers Cornerです。
先行曲のいくつかは気になってて、簡単にいうと人力ジャジーヒップホップっていうところにBrainfeeder的なクラブ系ネオソウルのフィーリングを注入した感じの音楽。
オープン・マイクのラップイベントにおけるレギュラー箱バンとして始まったらしい触れ込みなので、この全曲ゲストありきの構成というのは理にかなってて、なるほど納得というか基本的に「抜き」が上手い、主張強過ぎずにツボを押さえたアンサンブルかつ、ゲスト主役とはいえそこも極端に目立たせはしない絶妙なプロダクション。
本当のジャズでは全然なくジャジーなだけで、骨組みはロック・ポップスぎみなんで普通にインディ枠で聴けるのと、あまりニュアンスのエレクトロニクスを使用しないもんで質感はやや硬派で地味。偶然かもしれないけど、その特性がこれだけの超スーパー豪華客演(しかも重複無し)全曲に仕込むという背景と絶妙に噛み合ってて好盤になってると思う。